『猪突盲進』-原田燎太郎

World as One Family by Work Camp

リンホウ村紹介

再会

ハンセン病快復村・リンホウへ

2003年2月20日、16時30分。昨年11月以来3ヶ月ぶりに見る潮州市の空は曇っている。

 車のクラクションと人々の大声で賑わう潮州の大通りをタクシーで30分走ると、小さな町・古巷鎮に入る。

やがてタクシーは舗装されていない道路を行く。土煙をあげながら山道をのぼる。次第に道の傾斜はきつくなり、ゴミ捨て場の悪臭を過ぎると、トンネルの黒い入り口が現れる。

 トンネルの中は灯かり1つなく、真っ暗だ。前方には、小さく出口が輝いている。10年ほど前に開通したというこのトンネルがなかった時代、人々はこの山を越えるために迂回しなければならなかった。ハンセン病隔離の実態を垣間見ることができる。

 この闇を数分で抜けると、緑の景色が広がる。両側に雑草が茂る土道は、ウナギの養殖池の間を通っていく。リンホウ医院のキレイな白壁が見えてきた。

「危房勿近」

リンホウ医院を過ぎ、ガタガタの小道をさらに数分のぼり、リンホウ村に入る。ソワソワする。3ヶ月ぶりのリンホウだ。小学生のころを思い出す―正月にイトコのうちに遊びに行き、車の窓から年上のイトコの家が見えてくる瞬間と似た気持ち。

 「危房勿近」。

そんな赤いペンキの大きな字が目立つ曽さん(村人)の家の前を通る。倒壊の危険がある家屋に近づくことを警告しているようだ。昨年11月にはなかった。木が覆いかぶさるように生える劉さん(村人)宅にも同じ文字がある。もちろん、村人はそこに住みつづけている。

 土壁が崩れた廃屋・長屋B。その対面に立つ比較的新しい長屋Aとの間の中庭にタクシーは止まる。

静まりかえる村

太陽が雲に覆われて肌寒いリンホウは、ひっそりしている。誰もいない。感動的な再会を勝手に思い描いていた私は、興奮状態のまま黙ってタクシーからバックパックを降ろす。静まりかえる村。これがリンホウの現実か。

 長屋Aの奥にある家から、郭さんがゆっくりと出てくるのが見える。

 「ニーハオ、ニーハオ」

 そう言いながら私は微笑み、握手して軽く肩を抱く。郭さんは黙って、上目遣いでニコリと笑う。

 蘇村長が薄暗い部屋で机に向かっているのが見える。あいさつしながら村長の家に寄って行く。

 「来来、来来、来来…」

 椅子に座って手招きしている蘇村長と両手でしっかりと握手し、抱き合った。後ろからカオリン(枡田香織。今回は2度目の参加)の声がする、

 「あー、ニーハオ!」

 そう叫びながら近づいてくるカオリンの姿が見えると蘇村長は、

 「アィヤー!!来来、来来、来来!!」

 と絶叫し、カオリンとガッチリと握手する。この「痛さがうれしい」とカオリンは語る。