パーティー
この研修は「白諸村ワークキャンプ」とも言えそうな研修だ。今日は村でパーティーを開くという。
観光旅行中止
よく晴れた朝。グレイスが浮かぬ顔をしてファニーと話している。さっきまで白諸村の医院長と電話していたのだが。
わけを訊くと、村人と一緒に「七星岩公園」に行く計画に院長からストップがかかったという。私たちが村人と何かをしようとするときは、必ず院長の許可を得なければならない。すべての段階を院長の同意のもと進めねばならない。
「ここ(村)は私の領域だ。私の許可なく勝手に観光に連れて行かれては困る」。
院長はそう言って怒っていたという。
村人はこの企画を楽しみにしていて、80人もの応募者があった。初めて旅行計画を立てたとき、村人は街に行きたがらなかったという。ところが、ひとたび街に行ってみると、飯はうまい上に偏見は特にないことを知り、応募者が殺到するようになったそうだ。
この村でワークキャンプをするとしたら、それは容易ではないだろう。
「リベートを医院側にしっかり取ってもらえば、村でキャンプすることは可能ですかね?」
グレイスにそう訊くと、彼女は大きくうなずく。結局、ものを言うのはカネなのか。
傷を大きくする??
足の裏のタコにナイフをあてる。慎重に傷口の周りのタコをそぎ切っていく。見ていたファニーが言った、
「傷の穴の周りの皮をもう少し切り取って」。
治り始めているにも関わらず、タコ傷を大きくするのだろうか。
「傷の際の皮を切り取らないと、傷口が膿んだまま皮が覆い被さるようにしてふさがってしまうの」。
私は思い切って傷の際の皮にナイフを立てる。
この村人のタコ傷はまだきれいな方だ。骨が見えている足、膿みで真黄色になった大きな傷を持つ足、指が壊死している足。いろいろな足を見た。
私の足。魚の目の後が残り、ところどころ硬くなっている。
「おれの足ってきれいだなあ…」。
「ごめんなさい」
「文娯室」で村人と一緒に歌を歌ったり、ゲームをしたりした。すべてがグレイスのペースで進んでいく。彼女は乾いた大声で村人をリードしていく。
1時間ほど楽しんだ後、グレイスが村人に語り始める。
「ごめんなさい、十分なタコ削りができなくて。ごめんなさい、物をたくさんあげられなくて。ごめんなさい、観光旅行がダメになって…」。
グレイスは左腿を骨折したため、しゃがむ姿勢をとることができない。階段の上り下りも辛い。この足のために、看護士を引退した。それでも、MMCのボランティアとして療養所を訪問し、タコ削りを行っている。そんな彼女が、ごめんなさいばかり言う。
突然、1人の村人が大きな声を出して彼女のスピーチを止める、
「その気持ちを受け取った!」