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『猪突盲進』-原田燎太郎

World as One Family by Work Camp

やっぱり調子がおかしい郭さん

水道水で満たされたバケツを天秤棒で担ぎ、郭さんは許さん宅へと向かう。途中、郭さんは水を担いだまま井戸に立ち寄る。井戸をしばし見つめる。

許さんの水がめに水をあけた後、郭さんは空のバケツを天秤棒で担ぎ、コンクリートで固められた井戸の前に再度、立ち尽くす。もはやこの井戸から水をくむことはできない。

メールが見れない…

今日こそ、メールをチェックしよう。リンホウに来て以来、忙しくてまだ一度もメールを見ていない。意を決して古巷の町に向かう。

が。2月に場所を確認しておいたネットカフェは開いてない。朝9時では早すぎたのか。買い物を済ませた後も開いていない。じゃ、ギョウザでも食べながら開くのを待つか。しかし、2月によく行ったギョウザ屋も開いていない。

散々探し回り、他のネット=カフェを見つけた。店員さんは結構カワイイ。まあ、がんばった甲斐があったと言うべきか。

「いま停電中よ」。

結局、メールは見られなかった。

『苦難不在人間』を村人に

以前に触れた『苦難不在人間』(ハンセン病快復者・林志明の著作)を蘇さんに貸す。蘇さんは本好きで、老眼鏡をかけて本を読むからだ。今は唐代の歴史モノを読んでいる。

「それを読み終わったら、『苦難不在人間』を読んでくださいね」。

『苦難不在人間』の意味は、「苦難のない社会」だ。

「なになに、『苦難不在人間』?ハハ」。

私には、蘇さんの笑いがこう言っているように聞こえた、

「そんな社会はあるか」。

ハンセン病への偏見はないのかな

居合わせた四川省出身のお姉ちゃんと貴州省出身のお姉ちゃん(4月27日参照)が、蘇さんに貸したその本を手に取る。概要が書かれたページを読んでもらった。

「あー!この本はハンセン病だった人が書いたんだ!」

2人は興奮して食い入るように読み始める。隔離される経緯をつづった部分を読み、彼女たちは大声で何か話している。どうやら、リンホウの村人も同じ経験をしたんだということを話しているようだ。

四川省出身のお姉ちゃんは、私よりもリンホウ歴が長い。昨年9月にFIWC関東が初めてここに来たときには、すでに彼女たちは村に住み込んでいた。彼女は、近くの採掘現場で働いている、一緒に四川省から来た人々の食事の世話をしている。彼女ら四川省の人々に、ハンセン病差別を感じさせるような言動は全く見られない。彼らは蘇村長・許さんのことを尊敬しているほどだ。

「許さんは本当にいい人なんだ」。

そう言いながら彼らのうちの1人は、許さんに両手でタバコを渡す。

蘇村長が繁体字をスラスラと書いていくのを見て、

「スゲーたくさん知ってるな…」。

とシミジミ感心していたこともある。

村人の家計圧迫

インチンは昼ご飯を食べさせてくれた。そして今、夕飯をいただいている。ビール付きだ。私にだけ特別に卵焼きのスープを出してくれる。

「んコイタン、ホーチャ!」(卵はうまいぞ、食べなさい!)

いくら勧めても、彼女は頑として食べようとしない。ビールを無理やり彼女のコップに注ぐと、彼女は興奮して断る。半分怒って、私に全部飲むように言う。

昨日は許さん宅で昼夜と2食いただいた。ビールと焼酎が出てきた。その前の昼夜は蘇さんが招待してくれた。このときも、ビールと焼酎だ。さらにその前の昼はインチンだ。調理器具を村に持ってきて以来、まだ2回しか料理していない。このままでは、村人の家計を圧迫してしまう。1ヶ月120元(約1800円)で暮らす彼らにとって、一瓶3.5元(約53円)のビールは大きな出費だろう。いかに断るべきか、あるいはいかに返礼すべきか。蘇村長に尋ねてみると彼は言う、

「彼らはおまえさんと飯を食いたいんだ。そんな遠慮はいらん」。

リンホウの人々には、「自分のモノ」という感覚があまりないのかもしれない。

「いつ死ぬかはわからない」。

村長はよくそう言う。人を喜ばせることができるなら、自分のモノがなくなっても一向に構わないという考え方なのではないか。

またまたSARS

ジエシャン(ジル)から電話が来る。

SARSのせいで今、大学から外出することが制限されてるの」。

学生が構内から出るときは、許可が必要で、もし外出したら医師の診断書がないと大学に入れないという。中国の大学には寮が完全整備されており、学生はほとんどすべて寮に住んでいる。大学には店もあり、学生は外に出なくても普通に生活できる。とはいっても、あまりに厳重だ。もちろん今まで通り、最近潮州に来たヒトは構内に入れない。

今日、テレビで臨時放送があった。SARSへの注意を呼びかけた放送だ。それを見ながら医院の職員は顔をしかめる。いよいよSARSの危機が実際の問題になってきた…。