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『猪突盲進』-原田燎太郎

World as One Family by Work Camp

仙人みたいな許さん

雨天延期

今日リンホウに来る予定だった師範学院の学生たちは訪問を延期した。チャン=ジョンウェンはその理由を「今日は雨だから」だという。

今日の許さん

「チャーブエ?」(メシ食ったか?)

「チャホウ!」(食った!)

この潮州語のあいさつは許さんとの間では今晩も成り立たない。許さんは相変わらず食欲がないという。食べる量が少ないからか、お通じも悪い。この1週間で1回だけだ。オシッコの回数も少ない。彼は今年の1月からのオシッコの回数を記録している。1日に3回の日が続いている。町の病院で処方された薬は飲み終えたが、状態はよくならないという。

「ワーグァンシンルー、ルーグァンシンワー。イーヤンダ」(わしはあんたを思いやっている、あんたはわしを思いやっている。同じだな)。

許さんはそう言うと、少し痩せた気がする顔で笑い、「イーヤン、イーヤン」(同じだ、同じだ)と繰り返し、お茶を入れつづける。このところ許さんは仙人のようになってきた。

許さん宅の前には大きな竜眼の木があり、涼しい

愕然

ロウソクの灯りの下、お茶を入れていた蘇さんが私のノートに何か書き始める。蘇さんは普段、私のノートにまず書こうとしないので、何か異様な雰囲気を感じながら、彼のペンの先を追っていく。

「何日か前におれと松立の誕生日を訊いたが、どうしてだね。松立は、おれがあんたに誕生日を教えたことで腹を立てた。誕生日にはもしかして何かくれようとしているのかい。そうだとしたら、やめてくれ。松立との仲が気まずくなるからな」。

一瞬、何のことだかわからなかった。なぜ、誕生日を祝うのがいけないのか。

ハンセン病の患者は誕生日を祝わないんだ」。

蘇さんは先日と同じ言葉を繰り返す。顔は笑っているが、真剣だ。

「どうやらあんたは誕生日に何かくれそうだから、その前に不要だと伝えておいた。おれら2人が不満に思わないためにな」。

そういえば、誕生日を訊いた翌朝、蘇さんと松立さんの間に険悪な雰囲気が少しあった気がする。いつも一緒にいる松立さんは今夜、先に寝ている。私が彼らの関係を崩してしまうのか。暗闇の中、私は少しヨタるように帰っていった。

同じではない

消炎剤、膀胱炎の薬、足の痛み止め、消化促進剤、便秘薬。許さんが現在飲んでいる薬を、蘇村長が書いていく。

「腎結石だったら難しいな…。血尿も問題だ。治りにくいんだ。(許)炳遂は足にひどい傷があるだろ。あれと関係があるんだ」。

許さんの症状について書かれたHANDAの医師・マイケル=チャンからのメール(6月5日参照)の内容を村長に伝えると、彼は考え込んでしまう(ガンのことは言っていない)。

「そうか、また検査が必要か。(リンホウ医院の)院長に、炳遂がそれを受けられるよう頼んでみてくれ」。

許さんの症状は去年亡くなった陳宏広さんのに似ていると、村長は以前語った。本当にそうなのか。

「陳宏広にも足にひどい傷があった。食欲もなかった。去年の9月おまえさん方が帰国した後、彼はだんだん食が細くなり、便通が悪くなった。ただ、陳の場合は胃腸に問題があったんだ」。

村長は「プーイーヤン」(同じではない)と、首と手を振りながら2回言う。許さんの症状が陳さんのと同じではないかという自分の疑いを自分で振り払うかのようだ。

今日のイタダキモノ

郭さん:鴨肉、冬瓜、魚

若深さん:皮がビーフンの肉まん

松立さん:インゲン