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『猪突盲進』-原田燎太郎

World as One Family by Work Camp

ワーク(水洗トイレ)

今回のワークは水洗トイレの建設と断熱材設置(長屋Aの屋根へ)を行った。FIWCは建設業者を4人雇い、その仕事を手伝うというかたちで作業を進め、ワーク開始後11日目の11月13日、トイレは完成した。予定では完成を見ずに帰国するはずだったが、好天がつづいた上に、そのスケジュールはキャンパーの働きを計算に入れずに立てられたものだったようで、予定より早く完成させることができた。

 このワークは、隔離されてきた村に人の往来をもたらし、村人・建設業者・中国人キャンパー・日本人キャンパーが仲良くなるキッカケとなった。

簡単な地図を入れたい

★建設業者紹介

・ 「棟梁」こと蘇壮祥…「潮安県古巷鎮建築公司」の社長。

・ 「メキシコ」こと蘇錫栄…中南米風の帽子をかぶっていることから名づけられた。

・ 「童顔」…姓名不詳。童顔だから、「童顔」。

・ 「リーダー」…姓名不詳。あくまでキャンパーの「リーダー」であって、業者4人の中では下っ端。「棟梁」にタバコを投げ与えられる。

★「お客さん」扱い

 キャンパーは始めからすんなりとワークへ参加できたわけではない。業者との会話は、いちいち通訳を介さなければならない。中国人の習慣もよくわからない。まったく手さぐり状態でワークははじまった。

 ワーク初日の11月3日、午前9時ごろ村にきた建設業者の4人は、トイレの基礎になる穴をクワで掘りはじめた。彼らに歩み寄り、マークの通訳で交代してくれるよう頼むと、

 「不用(プーヨウ)、不用(プーヨウ)」。

 建設業者は、私たちを完全に「お客さん」扱いし、手伝わせてくれない。

 トラックで袋入りのセメントが大量に運ばれてくる。どうやら長屋Bに運び入れるようだ。セメントを持とうとすると、

 「不用、不用」。

 このままワークに絡めずに、トイレの完成を見るのだろうか。そんな不安を感じながら、午前中はおわった。

   *

 午後になると業者との信頼関係が生まれはじめた。昼休み後の午後1時30分、トラックで大量に運び込まれたレンガに水をかけるという仕事を仰せつかった。しょぼいワークだが、ここで丁寧な仕事ぶりをアピールせねば。

 次の仕事は、セメントをバケツで運ぶこと。「リーダー」が中庭でセメントをこね、「メキシコ」と「童顔」が基礎の穴に流し込む。「棟梁」は2人に指示を飛ばす。成り行き上、セメントを中庭からトイレ建設予定地に運ぶ仕事がキャンパーに回ってきた。

 基礎にセメントを流し込み終え、次はその上にレンガを積んでいく。無造作に中庭におかれたレンガを数m離れた作業現場まで運び、業者の人が積み上げやすいようにきれいに並べていく。モルタルを入れた「棟梁」のバケツが空になる前に、モルタルでいっぱいのバケツを持っていくキャンパー。空バケツを持ち去るキャンパーに「棟梁」が言う、

 「好(ハオ)!」

 おまえら、使えるじゃないか。そういう口調と表情だ。3時間ほどでレンガは1m積み上げられた。

★村人といっしょ

 ・おしゃべりな曽さん

 午後4時半ごろ、いつも赤いニット帽をかぶっている村人・曽さんがきた。タバコを吸いまくりながら、作業中の「棟梁」・「メキシコ」としゃべる。彼らの大きな笑い声に交じって、ときどき「ジップン、ジップン(日本、日本)」という声が聞こえる。

   *

 曽さんは2日目(11月4日)も現場にやってきた。今日はヘルメットをかぶっている。ションリーもいつの間にかきている。キャンパーが休憩をとって輪になって座っているところに彼らも加わり、マーク(朱佳栄)と話す。マークはスープに入れる野菜の茎と根をちぎりながら、曽さんはタバコを吸いながら、おしゃべりは止まらない。

 ・郭ちんも気合い十分

 3日目(11月5日)午後3時、レンガは積み終わり、屋根に木枠と鉄筋が張り巡らされると、バケツリレーでセメントが屋根の上に運ばれていく。「童顔」が中庭でセメントをこね、バケツにガシガシ入れる。それをキャンパーが足場の下にいる郭ちんに渡す。

 「フィッ!」

 気合いを込めて、郭ちんは決して重くはないバケツを「リーダー」が立っている足場に持ち上げる。それを受け取った「リーダー」は屋根の上にいる「メキシコ」にリレーし、屋根の上にバケツはあけられる。

・ シュウシュウは業者と仲良し

 4日目(11月6日)、コエダメの内側にレンガを積み、底をセメントで固める。

 「棟梁」は毎日午前10時半ごろになると、シュウシュウの部屋のガスを借りて昼食をつくる。「棟梁」の料理はワンパターンだがうまい。ガスを借りていることに対するお礼なのだろうか、業者の4人はシュウシュウといっしょに昼ごはんを食べる。長屋Bの横の木陰(村長宅側)に廃材をおき、その上に料理をならべ、それを囲むように5人が座る。いつも冗談をいっている「メキシコ」を中心に、笑いが絶えない。

   *

 5日目(11月7日)はフリーデー。6日目(11月8日)は長屋Aに断熱材を設置した。厚さ5cmほどの発砲スチロールの板を屋根に敷き詰め、セメントで固めるという簡単なものだが、性能はすばらしい。部屋は、暑い昼間には涼しく、寒い夜はあたたかいという快適なものに変わった。

・ 郭ちんの男気

 11月8日の午後。明日は村人を招待してのパーティー。眞人と私は、プロパンガス・食器を100枚近く・大鍋2つ・全員が座れるレジャーシートの買い出しで市場へ、陽子と泉は明日の料理の準備をすでに始めている。必然的に、バケツリレーでセメントを屋根に上げるワークを夕方までするのは、カオリンだけ…と思いきや、郭ちんが手伝ってくれた。この日以来、カオリンは郭ちんとの間に壁がなくなり、仲良くなれたことを感じている。

★中国人女子大生はハードワーカー

 11月10日。今日は日曜日なので、ウィンディー・ジル・アマンダ・デリック・シャロン・ハマー・ジェイソンがキャンプにきて、土曜日から参加しているマークと合わせて8人の中国人学生がワークをする。ワークは壁塗り。筋肉隆々のデリックは中庭で力強くセメントをこねる。彼につられて皆よく働く。

 私が中庭でセメントをこねていると、ウィンディーがセメントを現場に運ぶためのバケツを持ってきた。女の子だからと気を利かしたつもりで、少なめにセメントを入れると、

 「何してんのよ、もっと入れてよ!」

   *

 ジルはゆっくりと、重そうに、スコップでセメントをこねているが、その口元は微笑んでいる。

 「ワーク好きなんだね?」

 「おもしろいわ!」

   *

 ハマー・ジェイソン・マークよりも女の子たちのほうが圧倒的によく働く。

 眞人(藤澤)が「棟梁」のスコップを奪うと、「棟梁」はジルのを奪う。ジルはさびしそうに、手桶でセメントに水を注ぐ役にまわったが、スコップで掻き回されているセメントを、もの欲しそうに見つめている。それに気づいたのか、眞人がスコップをジルに渡すと、

 「ありがとう!」

 今日いちばんの笑顔だ。ウィンディーもスコップを欲しそうな顔。アマンダは我慢できず、ついにジルから奪った。ところが、3分と経たないうちに、ウィンディーがスコップをアマンダからうれしそうに取り上げる。しばらくこね回しているウィンディー。もう疲れたんじゃないかな。

 「替わろうか?」

 「やだ!」

   *

 出る幕がない眞人と私は、セメントまみれになった靴を洗いながら、ガシガシ働く中国人女子大生を遠くから眺めていた。

★「コ」の字計画の値下げ交渉

 「コ」の字型の長屋をつくる計画は約12万7000元(約190万円)かかると言われていたのだが、マークの通訳で業者と交渉した結果、10万元(約150万円)以下にまで下げることに成功した。一時は「11万元が限度だ」という棟梁と険悪なムードになり、ちょうどハマーがギターで弾いていた『禁じられた遊び』が妙に切なかったが、何とか値段を下げられた。勝因は、交渉する日を業者との信頼関係ができるまで延ばし、ワーク開始後8日たった11月10日にしたことにあるだろう。「棟梁」と仲がいい眞人とカオリンが拝み倒すかたちで値下げが実現した。ただし、その条件として部屋を1室減らすよう求められた。くわしい見積りは後日だすという。今後はマークが交渉にあたってくれる。

★トイレ完成記念パーティー

 11月13日。8時半すぎに「棟梁」はバイクでやってきた。たくさんの食材とビールを持っている。さては…!トイレのドアを水色のペンキで塗り、排水パイプに土をかぶせると、トイレは完成し、パーティー。和式便器…ではなく、中華便器(?)での初小便は眞人。洋式の方をはじめて使ったのはカオリン