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『猪突盲進』-原田燎太郎

World as One Family by Work Camp

6月の半ばのことだ。

6月の半ばのことだ。

医療改善に対する村人自身のあきらめ。村人が持つ自分自身への差別。そんな村人に疲れていた私は、リンホウを一刻も早く離れたいと思っていた。少し時間と距離をおき、リンホウを見つめなおしたいと考えていた。リンホウにおける私の存在意義も見失いかけていた。

そして、広州に発つ前日の夜をスワトウで過ごすことに決めた。広州に行ってしまうのがベストだったが、HANDAのゲストハウスが空いていなかった。

しかし、ホテルの手配をすませた後、リンホウとリンホウを取り巻く状況が変わり始めている事に気づいた。テレビ取材以後、社会がリンホウに気遣いを示し始めている。リンホウ医院が許さんに医療費を支給し、他団体に働きかけてリンホウの支援を要請した。昨日、蘇さんは自分自身への差別心が少なくなってきていることを見せてくれた。

そして迎えた、今日、別れの日。

「一路平安、一路平安」。

蘇さんはゆっくりと、私にわかるように言ってくれる。

村長の部屋には村人が集まっている。私を含めたそれぞれに、何となく落ち着かない、ソワソワした様子が表れる。村長はお茶をいつも以上に勧めてくれる。タバコもくれまくる。郭さんはスキンシップが激しい。シュウシュウもいつもと違う。

昨日、貴州省の出稼ぎ労働者に自転車を貸した。今朝自転車を見ると、全体的に傷だらけになり、右ブレーキが取れていた。

「だから彼らに自転車を貸すなって言っただろ!」

普段ならシュウシュウがそう怒る場面だ。しかし、今日は怒らない。終始にこやかだ。

「一路平安、一路平安」。

みんながそう言って見送ってくれる。もう一度振り返ったら取り乱しそうなので、そのままリンホウを離れる。

  *

淋しいものだ。リンホウは私にとって、すでに空気のような存在になっていたようだ。7月8日に帰ってくるとはいえ、離れることになると、私の中での彼らの存在の重要性、私の中に彼らが占める割合の大きさを再認識する。