リンホウ村とハンセン病
晴「交」雨読
リンホウでの生活を一言で表現するなら、「晴『交』雨読」だ。晴れたら村人の部屋に遊びに行き、雨の日は部屋にこもってHANDAのニュースレターを訳し、中国語を勉強する。五月病の心配はないようだ。
村人の家族
劉さんが祈っている。今日は農歴の上、祈る日らしい。長い線香を持ってひざまずいた劉さんは、地面に額が着くほど深く身をかがめる。
お茶を飲んでタバコを吸いながら、その様子を村長とボーっと眺めていると、村長が筆談を始める。
「(劉)友南はおしゃべりで、話し出すと止まらないんだ。手に負えない」。
そんな劉さんの家族は、リンホウをまったく訪れないという。おしゃべりだからではない。戦争で殺されたからだ。許松立さんも病気で家族を失っている。
その他の村人は多かれ少なかれ、家族と会っている。孫さんと方さんは自転車をこいで帰省することもある。
「年に1・2回だけだ。少なすぎる」。
村長はそう顔をしかめる。孫さんは毎月一度、リンホウ医院にお金を払って電話を借り、家族と話すという。家族に会いたい気持ちは誰しも同じだ。
リンホウでの「ハンセン病」の意味
曽さんと焼酎を飲んでいると、許さんのうちでお茶を飲もうということになる。許さんの長屋には四川省・貴州省の出稼ぎ労働者が住んでおり、にぎやかだ。曽さんのお気に入りの場所だ。
今日は、いつもと様子が違う。貴州省出身の恋人同士が激しいケンカをしている。曽さんはすぐに駆け寄り、仲裁の輪に入る。許松立さんもすでに仲裁に加わっている。
曽さんははただの酔っ払いではない。ふてくされて座り込み独りタバコを吸う彼氏に曽さんは懇々と説教をたれる。時々コツンと地面を叩く。いつになく真剣なしゃべりだ。いつもの笑いが出ない。
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今日は貴州省出身の楊志が酔った。フラフラしながら蘇さんの隣の部屋に帰って行った。許さんのお茶を飲み終え、蘇さんの部屋に行くと、蘇さんと許松立さんは楊志を介抱している。
「ほれ、漢方薬を飲め。頭がすっきりするぞ」。
蘇さんがコップに入った茶黒い薬を楊志に飲ませる。許松立さんは彼の腕を抱きかかえて支える。
「オッチャ~ん、おれ飲み過ぎちゃったよ~」。
「ごめんよ~」。
そう言いながら許松立さんに握手を求める。
ここリンホウでは「ハンセン病」が特別の意味を持たないようだ。