『猪突盲進』-原田燎太郎

World as One Family by Work Camp

新事実

今日は新しい事実をいくつか知ることができた。

新事実①:「インイン・インチンは姉妹ではない」

蔡玩銀(インイン)と蔡玩卿(インチン)は姓と名前の一字が同じだ。以前から隣同士に住んでいる。誰かは姉妹だと言っていた。ジエシャン(ジル)が彼女らのことを話すときは”the sisters”と表現する。実の姉妹だと思い込む要素がそろっている。

今朝、インチンの部屋で私の家族の話になった。成り行き上インチンに訊いてみた、

「インイン、ルーダモエモエ?」(インインさんは妹さんですよね?)

インチンは首と手を大袈裟に振って否定する。

通称名を使っているのだろうか。去年の8・9月ごろ風邪が元で眼が見えなくなったインチンと、テキトーな潮州語を話す私とは会話がほとんど成り立たない。筆談で蘇村長に確認をとってみる。

「ここの13名は全員、父母がつけた名前を名乗っている」。

この文字の下に村長はアンダーラインを引く。名前が似ているのは偶然だそうだ。1958年に村に来たインチンと1960年に来たインインは実の姉妹だと思い込ませるほど、気遣い合って暮らしている。

新事実②:「インインの弟は定期的にインインのところに来る」

昼前、バイクの音と共に向かいの長屋Bが騒がしくなる。曽さんに呼ばれて行ってみると、やって来たおじさんはインインの部屋に座り込んでいる。その男は丁寧に私に話し掛けてくるが私のチュウゴクゴは通じず、やはり筆談に頼ってしまう。彼は4項目に分けて質問してきた。

(1)あなたは何人ですか。(2)留学生ですか。(3)この度はこの長屋(長屋B)に天井板を張りに来たのですか。(4)あなたの行いは賞賛に値します。(5)ここでの生活はいかがですか。

とても丁寧に書かれている。「你」(あなた)ではなく敬称の「您」を使っている。ここで曽さんが言う、

「この人はインインの弟だ」。

弟さんは1ヶ月に1度ほどここを訪れて、日用品をインインに渡すという。

私が「愛心天使」設立の話をすると、彼は親指を立ててみせる。そして嬉しそうにこう書いていく、

「今度ここに来るときは日用品を買ってきてあげますよ」。

彼は携帯電話の番号も教えてくれた。

新事実③:「陸裕城さんのお母さんはタイ人だ」

「チャーブエ?」(メシ、食ったか?)

「チャーホウ!」(あぁ、食った!)

親しい間柄で交わされるこのあいさつは、リンホウでも町でもよく耳にする。「ニーハオ」の潮州語版「ルーホウ」は聞いたことがない。

村の外にも家を持っている陸さんが久しぶりに村に来た。彼は私が潮州語を話すと異常に喜ぶ。今日も言ってみる、

「チャーブエ?」

「キンカウ!」

陸さんは嬉しそうに聞いたことのない言葉を返す。

「チェーチユーウェー、『チャーホウ』。タイゴッウェー、『キンカウ』」。

陸さんはそう教えてくれる。「チェーチューウェー」は潮州語で潮州語のことだ。「タイゴッウェー」?「ゴッ」は「国」で「ウェー」は「語」の意味だから…。筆談で確認すると、「泰国語」つまり「タイ語」だった。

「え、陸さん、何人ですか?中国人じゃないの?タイ人?」

混乱する私を見ているインチン、インイン、若深さんは爆笑する。陸さんは教えてくれた。彼のお母さんはタイ人で、潮州出身のお父さんが彼女と結婚したという。陸さんは5歳の時に潮州に戻ってきたそうだ。