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『猪突盲進』-原田燎太郎

World as One Family by Work Camp

また雨…

院長の同意

村長の部屋から見える朝の景色は、今日も雨だ。昨夜やんだが、朝からまた降り始めた。今日も許さんは検査に行けない。

ジエシャンの募金活動の計画を蘇村長に報告する。しかし、村長をはじめ、若深さん、松立さんはあまり喜んでいる風ではない。

「おまえさん方の愛心はよく分かっている。但しな、すべては院長の同意を得てからだ」。

貸した金

村長の部屋から出て行った松立さんが10分ほどで戻って来て言う、

「(許)炳遂にはカネがあるぞ。募金する必要はない」。

松立さんは許さんのところに行って確かめてきたという。許さんの家族が1400元(約2万1000円)のお金を持っているそうだ。ただ、このカネは今手元にない。リンホウに野菜を売りに来る男に貸しているという。一方で許さんはリンホウ医院に借金をしている。お金がないのと同じことだ。

点滴

許さんの部屋には、太くて背の低い透明のボトルが2本おいてある。

「日本産だ」。

そう言いながら許さんは、人差し指を手首に突き立てる。点滴だ。

「2本で145元(約2175円)だ」。

もちろん、彼の自己負担だ。点滴を打って経過を見ることになったという。

医院の職員の奥さんに点滴を打ってもらう許さん。費用は自己負担

古巷にはいかない

11時、雨がやんだ。許さんをバイクで病院に連れて行くことになっている蘇瑞潮さんのところへ行く。医院の職員もそこにいた。

「雨、あがりましたね。古巷には何時に行きます?」

「いかないよ」。

「いかない?雨があがったら行くって言ったじゃないですか」。

「へへへ…」。

「じゃ、いつ行くんですか」。

「雨が降ってないときだ」。

「降ってないじゃないですか!」

「へへへ…」。

医院の職員が口を出す、

「点滴を打って様子を見るから、町の病院に行く必要はない」。

「許さんは検査が必要なんです」。

「…。雨で道がドロドロだから行けないんだ」。

そう言う彼は今日、その道をバイクで通って医院にきた。不審に満ちた眼を彼らに向けると、蘇瑞潮さんは言う、

「行くさ、行くさ」。

「今日?」

「さあてな」。

「さあてな…!?」

「太陽が出て道が固まったら行くさ」。

こうなったら太陽が出るのを待つしかない。待つしかない。

医院のメシ

許さんが古巷の病院に行けないことをリンホウ医院の電話からジエシャンに伝える。電話が終わると職員につかまり、久しぶりに医院で昼ご飯をごちそうになる。

うまい…。昼間から肉が出てくることは村ではほとんどない。スープも2種類ある。ウリのスープと白菜のスープだ。両方とも肉が入っている。

許さんの点滴

夕飯をゴチソウになりに蘇さんのうちへ向かう。途中許さんの家を通りかかると、彼は点滴の最中だった。許さんはニコニコで点滴が刺さる腕を見つめる。近くでボーっとしている医院の職員の奥さんが針を刺してくれたという。

「日本産の点滴はいいぞ」。

許さんはご機嫌だ。ただ、これはアミノ酸の点滴で、血尿とは関係がないはずだ。やはり検査が必要だ。

院長の同意

明日から募金活動を始めたい。そのためには院長の同意が必要だ。ジエシャンが午後、院長に電話した。同意は得られたのだろうか。

「院長は同意したわ。ただ、テレビの件は衛生局の許可が必要だって。中学校を訪問して効果的に寄付を集めるためにもお役所の許可が必要らしいわ」。

また「許可」か。「愛心天使」設立準備以来、この「許可」という言葉を聞く度にイライラっと頭にくる。それはさておき、中学校にいく準備が整い次第、ジエシャンらと一緒に寄付を募りに行くことになった。

今日のイタダキモノ

郭さん:白粥